巨大債務危機
デフレ下の債務サイクル
サイクル初期
サイクルの初期において債務は所得よりも速く拡大することはない。債務の伸びが所得を増やす活動につながるからだ。借金は事業を拡大したり、生産性を向上させたり、売り上げの伸びを支えることができる。
バブル
長期債務サイクルが長く持続可能である主な理由は、中央銀行が利下げをするから。これによって債務返済負担の上昇を抑えることができ、クレジットカードで購入したモノの代金の毎月の支払コストも抑えることができる。
しかしこの状況が永遠に続くことはない。
債務はあまりにも大きくなりすぎ、これまでのプロセスが逆転し、デレバレッジが始まる。
中央銀行はインフレと経済成長をターゲットにするのであり、インフレと実質成長率がそれほど高くなければ中央銀行は債務の伸びを促し、バブルを生みだす資金を供給することになる。
- 従来の評価に比べて価格が高い
- 高水準の価格からさらに価格が上昇することが現在の価格に織り込まれている
- 強気な市場心理が支配的である。
- 高水準の借り入れによって購入されている
- 買い手は極端に先を見越して先物買いをし、将来の価格上昇を投機の
- 新規の買い手(これまで投資をしたことがない人)が市場に参入する。
- 金融緩和がバブルを膨らませ、金融引き締めがバブルをはじけさせる。
所得の伸びが債務返済をするのに十分な大きさであるという水準を保つことは非常に重要だ
ピーク
物事がこれまでになく良好なとき、しかし皆がまだ良くなると考えているとき、金融市場のピークが訪れる。
ほとんどの場合、中央銀行が金融引き締めを始め、金利が上昇したときにピークが起こる。
バブルのピークの初期段階では通常、短期金利の上昇によって長期金利とのスプレッドが縮小・消滅する。
この結果現金を保有するよりも貸し出しをするインセンティブが小さくなる。
イールドカーブの平坦化あるいは逆転(長期金利が短期金利を下回ること)が起こり、バブルがはじける直前に人々は現金保有に走り、信用拡大ペースが減速
バブル崩壊の初期の段階では、人は株価の下落を買いの好機と間違って判断し、株価は過去の企業収益と今後の予想収益に比べて割安だと誤解する。そして今後起こりうる企業収益減少の規模を説明できない。
富が縮小して所得がさらに速いペースで減少するのに伴い、信用度が低下し、それが貸し出しを圧縮し、支出に打撃を与え、投資活動を減退させ、それによって金融資産を買うためにお金を借りる魅力が減退する。
2007~2008年の米国のように適切な対応がとれたときには、米連邦準備理事会(FRB)が金利を迅速に引き下げ、さらにそれが機能しなくなったときには、それに代替する経済刺激策にシフトした。これはFRBが1930年代に利下げのペースが遅いばかりか、ドルの金連動を守るために金融引き締めに動いた過ちから学んだこと。
債務対所得の比率が100%でデレバレッジ進行中だとする。これはこの国の債務の金額が国全体の年間所得と同額ということ。
債務の金利が2%だとすると債務が100で金利が2%なら返済を1年間しなかった場合、1年後にはその債務は102になる。
所得が100年で年率1%のペースで増加すると1年後には101になる。既存の債務の返済負担が拡大しないようにするためには、名目所得の伸びが名目金利の上昇率を上回る必要がある。
「増刷」は中央銀行による国債や社債、株式、その他の非政府系資産の買い取りによってなされる。
紙幣の増刷・債務の貨幣化と政府による保証は、利下げができない不況下では避けて通ることができない。
金融政策
「量的緩和(QE)」:「紙幣の増刷」や金融資産、債務の買い入れ
株式相場が直前の最高値まで回復するには10年近くを要し、景気回復以上に時間がかかるのが普通だ。
ある国で債務危機と景気低迷が起こると、通常、その国の中央銀行は通貨の下落を補償するのに十分な金利引き下げができなくなる。そのため、お金はその国とその通貨から流出し、より安全な国に流出する。大量のお金が流出してその国の融資が枯渇すると、中央銀行は信用市場の引き締めか紙幣の増刷でお金を供給する
インフレ下のデレバレッジ
その国が外国から輸入する以上に外国にモノを売るとしたらその通貨への需要は供給を上回る。
こうした状況では中央銀行の任務は容易である。なぜなら資本の流入超過は通貨の価値上昇につながり、中央銀行が選択次第で金利を引き下げ、あるいは外貨準備を増やすことになるから。